国税庁は1日、相続税や贈与税の算定基準となる2016年分の路線価(1月1日時点)を発表した。約32万8千地点の標準宅地の評価額は、全国平均で前年比0.2%のプラスとなり、リーマン・ショック前の08年以来、8年ぶりに上昇に転じた。東京、大阪、愛知など14都道府県(前年は10都府県)で上昇した。 不動産投資の活発化や金利低下に伴う住宅取得需要の高まりに加え、インバウンド(訪日客)需要も影響した。上昇率は20年に五輪開催を控える東京(2.9%)が最も高く、東日本大震災の復興事業が進む宮城(2.5%)、福島(2.3%)が続いた。
東京と大阪(1.0%)が3年連続、愛知(1.5%)が4年連続の上昇となった。下落は33県だった。うち29県は下落率が縮小したものの、大都市圏と地方との二極化が続いている。
都道府県庁所在地の最高路線価が上昇したのは25都市(前年は21都市)。大阪市北区角田町の御堂筋は22.1%上がり、東京23区内や名古屋、訪日客が多い京都、金沢、福岡など10都市で上昇率が10%を超えた。
ただ、インバウンド需要の減速感や英国の欧州連合(EU)離脱決定に伴う金融市場の混乱などで、今後も不動産取引が活発に行われるかは不透明だ。ドイツ証券の大谷洋司シニアアナリストは「混乱前から都市部の不動産価格はピークアウトしている。今後は調整局面が続く可能性がある」と指摘している。
路線価は主要な道路に面した土地1平方メートルあたりの価格。国土交通省が毎年3月に公表する公示地価の8割を目安に、売買実例も参考にして算出する。調査地点数が多いため土地取引の指標としても活用される。
日本経済新聞より抜粋 |
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