都心新築マンションの価格高騰と、それに伴う物件コンパクト化で、2004年以来のシングル女性マンション購入ブームが起きそうな気配だという。住宅ジャーナリストの櫻井幸雄さんがリポートする。
◇第1次ブームは価格が高騰した2004年ごろ
シングル女性がさかんに分譲マンションを買い始めたのは2004年から06年ごろ。男女ともに結婚しない人が増え始め、女性の1人暮らしでも住宅ローンを組みやすくなったのがきっかけだった。
今では信じられない話だが、昭和時代、シングル女性が住宅ローンを組もうとすると、金融機関は渋い顔をした。当時、働いている女性は結婚までの「腰掛け」で、いずれは結婚して退社すると考えられていた。
退社するとローン返済ができなくなる。だから、「結婚してから、夫名義で購入したほうがいいんじゃないですか」とローンを断られるケースが多かった。住宅ローンでも男女差別があったわけだ。
この差別がなくなり、シングル女性がマンションを買いやすくなったのが21世紀に入ってから。といっても、01年から03年ごろはシングル女性向けの新築分譲マンションが少なかった。理由は、地価の下落で都心マンションブームが起き、ファミリー向けの3LDKが主力商品になっていたからだ。
その新築分譲マンションの価格が上昇し始めたのが、04年ごろ。それまで4000万円で購入できた都心3LDKが5000万円以上になってきた。すると、購入できる人が減る。そのとき、3LDKだと5000万円以上になるが、1LDKの小さな住戸をつくると、2800万円とか3000万円で分譲できる。それで、お手ごろ価格の1LDKが都心部に増え、「都心コンパクト(マンション)」という呼び名が生まれた。
その都心コンパクトを、住宅ローンの門戸が開かれたシングル女性が盛んに購入した。これが、第1次シングル女性マンションブームとなる。そして17年の今、シングル女性の第2次マンションブームが起きようとしている。
その理由は二つある。一つは、都心を中心に新築マンション価格が上昇しており、前述したのと同じ理由で都心コンパクトが増えるから。マンション価格が安かった11年から13年まで、新築マンションは3LDKと2LDK主体で、1LDKが少なかった。それが価格上昇期に転じ、1LDKが増えてくるわけだ。
もう一つの理由は、買い手の事情だ。
◇均等法世代の女性が人生の決断をする時期
データを取ったわけではないのだが、シングル女性がマンションを買う“適齢期”はどうも40歳前後のようだ。アラフォーあたりで、いろいろな意味で将来の予測が立つし、将来への不安も生まれる。そろそろマイホームを買っておいたほうがいいのかもしれないと思い始める。
加えて、シングル女性の場合、アラフォーあたりでまとまった額の貯金も持っている。1000万円以上、人によっては2000万円以上の貯金があるので、都心部でのマンション購入も夢ではない。
都心マンションを持っていれば、将来、売却して高齢者施設に入る道筋ができる。もし、結婚して新しい世帯を持てば、それまで住んでいた1LDKを賃貸にすることで、老後の生活資金となる。それで、思い切ってマイホーム購入を決断するのが40歳前後というわけだ。
今年40歳を迎える女性が大学を卒業し、就職したのは18年前の1999年だ。くしくも、男女雇用機会均等法の正式名称が、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」に変わり(それまでは「…確保等女性労働者の福祉の増進に関する法律」だった)、募集、採用、配置、昇進などで男女に差をつけることが禁止され、女性の就職条件が好転した年である。
それ以降、男性と変わらぬ条件で就職する女性が増え、その女性がアラフォーを迎える……。すでに、分譲マンション販売現場では、女性の検討者が増えたとの報告もある。
今年、シングル女性の第2次マンションブームが起きる可能性は極めて高い。
毎日新聞抜粋 |
|
|