転勤や進学など春の引っ越しシーズンを控え、希望日に引っ越しできない「引っ越し難民」が増える可能性が高まっている。ヤマトホールディングス(HD)の引っ越し子会社が料金を過大請求していた問題で国土交通省の行政処分などを受け、引っ越しの引き受けを停止したためだ。人手不足で他の業者も大量の受注は困難な情勢で、国交省は利用者に引っ越し時期を分散するよう異例の呼びかけを行っている。
ヤマトHD子会社のヤマトホームコンビニエンスは昨夏、法人向け引っ越し料金の過大請求問題が発覚し、昨年8月から引っ越しの引き受けを停止している。1月23日には国交省から貨物自動車運送事業法に基づく事業改善命令を受け、不正が確認された123支店が車両使用停止の行政処分を受けた。このため、引っ越し業務の再開は4月以降とみられ、繁忙期の3月は引っ越し業務の停止が続く。
国交省によると、引っ越しは毎年3月から4月に集中。最も多い3月は、ヤマト子会社を含む大手引っ越し業者6社で約33万件と平時の約2倍の件数となる。引っ越し大手はサカイ引越センター、アート引越センターを運営するアートコーポレーション、日本通運の大手3社にヤマト子会社らが続く。
ヤマト子会社のシェアは1割程度とみられるが、大手業者の担当者は「ヤマト子会社の顧客を他社が引き受けるのは、人手不足とトラックの確保に限界があり難しい。新たな顧客を受け入れる余裕はない」と話す。アートは3~4月の受注を5%増やす計画だが、引っ越しサービスの品質保持のため17年に受注を2割抑制したことから、今春も大幅な受注増は期待できないという。
インターネットで引っ越しの見積もりなどを行う総合IT企業「エイチーム」が全国の引っ越し業者25社に行った調査によると、「昨年より多くの引っ越し難民が発生する」と答えたのは全体の32%、「昨年と同程度の難民が発生する」と答えたのは28%で、全体の6割が難民の発生を予想した。
「引っ越し難民」は昨春も社会問題となったが、今春はヤマト子会社の引き受け停止で拍車がかかるのは確実。このため国交省は「3月から4月にかけて集中する引っ越しのピーク時を避け、引っ越し時期を分散するよう協力してほしい」と、今シーズンから初めて消費者と引っ越し業者に呼びかけている |
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