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住宅ローン控除「築年数緩和」の重すぎるリスク築年数要件は事実上撤廃、中古の利点と問題点

変異や流行を繰り返す新型コロナウイルスの出現に右往左往した2020年。緊急事態宣言下の4月や5月には取引が半減するなど、不動産市場も少なからぬ影響を受けた。しかし影響は一時的なもので、昨年2021年後半には首都圏新築マンション平均価格がバブル期超えを記録するなど、堅調を維持してきた。

 とくに首都圏では売買が成立したときの価格である「成約単価」は上昇し、「売出し単価」との差も大きくなっている。緊急事態宣言下の在庫を抱えた単価でも売れているこの現状は、まさに圧倒的な「売り手市場」にあるといっていい。


 コロナ禍により自宅で過ごす機会が増え、「住居」への関心が高まったことで一次取得層(新規購入者)の持ち家ニーズが大きくなったのもその理由の1つだ。新築、中古物件ともに需要の高まりがあるものの、供給戸数が増えず需給バランスのアンバランスが続き、価格の高騰が続いてきた。

 しかしここにきて、年末から少しずつではあるものの新規の売り出しが増加傾向にあるようだ。この状況が数カ月に及ぶようであれば売り手市場の変化の兆しといえるかもしれない。ただ当面は、2022年も好調に推移すると見ている。


■「逆ざや」対策で引き下げられた住宅ローン控除

 さて、好調な不動産市場の後押しをしてきた施策の1つが住宅ローン減税、正式には「住宅借入金等特別控除」と呼ばれる制度だろう。

 基本的に、年末時点での住宅ローン残高の1%が所得税(控除しきれない場合は住民税)から控除され、減税されるという制度だった。条件を満たせば新築住宅だけでなく中古住宅、また一戸建てやマンションの区別なく控除対象となる。

 そもそも住宅借入金等特別控除は、住宅購入の際にかかる利息の負担を減らすために設計されたシステムである。しかし変動金利であれば0.289%(2月 auじぶん銀行、キャンペーン適用など諸条件あり)の金融機関もあるような空前の低金利となっている今、負担する利息<控除率(1%)の状態が続いてきた。利息負担よりも、控除され戻ってくる税金のほうが多くなるいわゆる「逆ざや」現象だ。

そこで国は、本来の制度趣旨とは異なる「逆ざや」状態の解消を目的に控除率の見直しを含めた制度の改革に着手。昨年12月24日、ついに「2022年度税制改正大綱」によって閣議決定された。2022年度税制改正が施行されるのは原則として4月1日となるが、通例に従い「2022 年1月1日」の取引から適用されている。

 住宅ローン減税制度は、これまでも制度の内容に変更が加えられている。例えば、「2021年の税制改正」では、消費税率引き上げに伴い、消費税がかかる場合の控除期間は10年から13年に延長された。また制度の適用条件の1つである床面積要件緩和なども加えられている。


 しかし、新しい「2022年度税制改正大綱」では、控除額そのものを引き下げるほか、既存住宅、つまり中古の物件についても大きな変更があった。以下、「2022年度税制改正大綱」で注視すべきポイントについて触れていく。

■借入限度額は段階的に引き下げられる

 まず先述したとおり、控除率が新築、中古住宅ともに1%から0.7%と引き下げられた。

 さらにローンの借入限度額については省エネ基準適合住宅などに認定されない一般的な新築住宅では3000万円が上限となり、以前までの4000万円から引き下げられる結果となった。なお、2024年以降、借入限度額は段階的に引き下げられる予定となっている。一方で、控除期間は10年から13年への延長が決定している。


 また中古住宅に関しても控除率が0.7%と引き下げられた。ただ借入上限額が2000 万円と、控除期間は一律10年とそれぞれ変わらず、現状維持となった(消費税が課税されない既存住宅の場合)。

 その他、そもそも住宅ローン控除の対象となる所得要件が3000万円以下から2000万円以下へと引き下げられることも決まった。

 中古住宅の購入時に住宅ローン減税を受けるためには、新築購入時の条件にプラスして求められる項目があった。それが建築年数要件だ。

どんな建物であっても、経年劣化は避けられない。しかし住宅ローンは物件に対しての資産価値に応じた形で実施されるものであるから、中古物件が新築物件よりも厳しい要件を満たす必要があるのも当然のことだと言える。これまで、中古住宅が住宅ローン控除の適用となるには、具体的に次のような築年数要件を満たす必要があった。

●耐火構造(コンクリート造)の場合 築25年以内
●非耐火構造(木造)の場合 築20年以内
 これらの築年数を超えた物件で住宅ローン控除を申請する場合、「既存住宅売買瑕疵保険」または「耐震基準適合証明書」を取得しなければならないというものだ。


 しかし新しい「2022年度税制改正大綱」では築年数要件は事実上撤廃され、「昭和57年1月1日以降に建築された住宅」、つまり新耐震基準適合住宅であれば、控除の適用になると要件の緩和が発表されたのである。築40年程度の木造戸建てでも「ローン減税の対象になる」と認められたことになる。

■新耐震基準とは? 

 ちなみに新耐震基準とは、1981(昭和56)年6月1日以降に導入された建築基準法に基づく耐震基準で、『中規模の地震(震度5強程度)に対しては、ほとんど損傷を生じず、極めて稀にしか発生しない大規模の地震(震度6強から震度7程度)に対しては、人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害を生じないこと』を目標として定められたものである。(国土交通省『Ⅰ 住宅・建築物の耐震化に関する現状と課題 』)


 阪神・淡路大震災また新潟県中越地方地震の被害状況を鑑みた際、1981年以前の耐震性が十分でない建築物の被害が甚大であったと報告されている。中古物件の耐震化において、1981年以前の建築物であるかどうかという点が重要視されたのはこのような理由からだ。

 新築、中古ともに売れ行き好調の住宅市場において、供給在庫は圧倒的に不足している。新築の不動産価格が大幅に高騰する中、築年数の要件撤廃は中古住宅を購入したい層にメリットは大きいだろう。少子高齢化で空き家問題が社会化するなど、既存住宅の行く末は国にとって喫緊の課題となっている。中古市場住宅活性化を後押しする面での新しい税制改革であるという見方もできるはずだ。

しかし残念ながら、築年数の要件撤廃はメリットばかりとは言えない。新耐震基準が制定された1981年からすでに40年以上経過している。木造住宅では、2000年にも耐震基準の見直しが行われ、地盤面や構造材、耐力壁の配置など新たな基準が設けられた。俗に「81-00(ハチイチゼロゼロ)住宅」と呼ばれる新耐震基準に合致する木造住宅は、現行の耐震性能を1だとすると、0.7を下回る住宅が6割以上、1.0を下回る住宅を含めると8割以上が現在の耐震性能を満たしていない(H30年木耐協調べ)。


 加えて「中古物件」と言っても建築物ごとに状況は異なる。天候や立地など置かれた環境条件やメンテナンス状況によって、傷みや劣化の具合はそれぞれ違うためだ。ひどい雨漏りが発生していたり、シロアリの被害で床下が壊滅していたりというケースに遭遇するのも、築40年の住宅であればそれほど珍しいことではない。ひどい場合は建物そのものが傾いている例もあった。

 このような不具合がある中古物件を購入する際には、補修や改修工事が不可欠となる。ケースバイケースであるが、雨漏りやシロアリ被害の修繕であっても数百万、実際のケースでは700万円の費用を要したこともあった。建物自体が傾いている場合にはさらに費用がかかり、数百万単位では済まない事例も実際に存在する。


 中古住宅で最大限、住宅ローン減税が適用される場合、2000万円✕;0.7%✕;10年=140万円となる。一概には言えないが、140万円ですべての耐震改修、補強工事をまかなうのが難しいことは容易に予測される。

■築20年でも40年でも同じ「既存住宅」

 そして中古住宅の築年数における20年と40年の間には大きな隔たりがある。物件固有の事情はあるものの、築20年の物件は最新の建築基準法の耐震性能を有している点、また瑕疵が顕在化している見地において、一定の品質が担保されていたという見方もできる。だからこそ、ローン控除適用条件の根拠ともなりえたのである。
一方、新耐震基準以降の建築物、築年数40年以上経過した中古物件は先に述べたように、かなり傷みが大きい物件も存在する。耐震基準を満たした建築物であるという証明(耐震基準適合証明書)や隠れた不具合があった場合の補修工事費用を保険金でまかなえる瑕疵保険が物件のコンディションを保証する役割を担っていた。

 「2022年度税制改正大綱」では、1981年の新耐震基準より前の中古物件、築40年よりさらに古い建築物で控除を検討する場合は、これまで同様に耐震基準適合証明書が必要となる。ただ、耐震診断を経て耐震基準に合格するには、かなり高い壁となることも付け加えておく。


 いずれにせよ今後は、新耐震基準以降であれば、品質が保証できない物件であっても住宅ローン控除の対象となる。「住宅ローン減税の対象となる建物だから安心」という認識はあらため、買主として物件を見極める慧眼(けいがん)が必要になるのは間違いないだろう。










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