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夫の死後「5000万円」を相続した女性が青ざめた、不動産業者からの「衝撃の一言」…こうして「住む家」を失いかけた

2025年には6世帯に1世帯が一人世帯という現実を目前に控え、必ずやってくる老後不安に「自分だけは大丈夫」と思っていても、多くは自分が“最後のひとり”になることは想定していない。そしてもしも最後のひとりになってしまった場合に直面する、多くの問題についてもあまり知られていない。


 そんな盲点をついたのが、司法書士の太田垣章子氏が著した『あなたが独りで倒れて困ること30』だ。

 頼るべき親族がいない高齢者のサポートを続ける太田垣氏は「結婚していようが、子どもがいようが、誰しも『おひとりさま』になる可能性はあり、困らないように『自分ごと』として捉えてほしい」と話す。

 太田垣氏が「すべての人が最後はおひとりさま」と言う理由は、これまでの活動のなかで「もう少し早く備えておけばこんなことにはならなかった…」という人たちをたくさん見てきたからだ。じつは老後に発生する問題は、ひとりひとりの生き様によって事情が異なるため、備えもまたそれぞれなのだという。

 <夫の死後「5000万円」を相続した70代女性が青ざめた「自宅売却」の落とし穴…老後は「やってはいけない」>であげた通り、ご主人が亡くなり「おひとりさま」になった真千子さん(仮名・78)は、これまで住んでいた広い持ち家を売却し、手狭な賃貸のマンションに引っ越しをしようと決意し断捨離を始めた。

 ご自身の息子の手も借り家の荷物が半分くらいに整理されたころに、具体的に部屋探しを始めたが、そこには思わぬ落とし穴が待ち受けていたという。

逃げるように家に帰った


 子どもたちも自立しているので、相続で遺すことをそれほど考える必要もありません。気に入った物件があれば、場合によっては、もう少し家賃を出してもいいかしら……そう夢を膨らませていました。

 都心まで電車で30分以内の、落ち着いた雰囲気でありながら商店街も残る町の賃貸仲介店舗。荷物の片付けから少し解放されたくて、気分転換に立ち寄ってみました。

 はやる思いと裏腹に、ドアを開けた瞬間、真千子さんは自分が場違いなところに来てしまったのでは、という印象を受けたのです。

 店舗には若く、髪の毛を明るく染めた男の子たちがパソコンに向かっていました。一斉に顔を上げて真千子さんを見た瞬間、「あれっ」と怪訝そうな表情です。

 「お部屋を探しているんですけど」

 消え入りそうな声を振り絞ってみましたが、聞こえたのかどうかすら分かりません。ドアのところで立ちすくんでいると、ひとりの年配の男性が近づいてきました。

 「お母さんがお部屋を探されているんですか?」

 そう言いながら、カウンターの席に誘導してくれました。

 真千子さんは、そこからのことをほとんど覚えていません。いろいろ質問され、真千子さんも自分の希望を伝えようとしましたが、頭に残っているのは「部屋は貸してもらえない」ということでした。理由も聞かされたのですが、頭には入ってきません。
とにかく逃げるように、家に戻りました。

 家に着いて落ち着きを取り戻した頃、片付いた部屋を眺めながらこんな疎外感を味わうために断捨離をしてきたのかと、少し情けなく感じました。これが高齢者がひとりで生きるということの現実なのでしょうか。

 せっかく重い腰を上げて引っ越しに向かって作業もしてきましたが、このままこの戸建てに残るのか、それとも老人ホームに入所するしかないのか、自分でも分からなくなってしまっていたのです。

 真千子さんから事情を聞いて驚いた長男の誠さん(仮名・49歳)が、大学時代の友人で不動産会社を経営している中西さん(仮名・51歳)のことを思い出しました。

 すぐに連絡をとってみると、中西さんの口からは、高齢者の賃貸について驚くようなことばかりが飛び出してきました。それを要約すると……

 1 70歳を超えるとほとんど部屋は貸してもらえない
2 家賃の価格帯によって差はなく、どの金額帯でも貸してもらえない
3 家主は高齢者に部屋を貸すより空室の方がまだマシだと思っている
4 家主は事故物件(孤独死)になってしまうことを怖れている
5 認知症になった時の対応に困る
6 建物を建て替える時に退去してもらえず困る
7 家賃を払ってもらえるのか心配

 中西さんがあげた理由が、ざっとこのようなものでした。

借りることは、ほぼできない



 確かに家主側の思いも分かります。ただ真千子さんの場合、家賃も払えるし、息子たちがいるのですから、何かあったとしても放置はしません。それほど家主側に迷惑をかけることはないと思うのです。

 中西さんはそれを聞いても、家主側の理解はなかなか得られないと呟きました。

 「気持ちは分かるんだけどね。一度貸してしまうと、借り手の力の方が強いから、日本の家主の権利は二の次でさ。だから家主としては、どうしても敬遠してしまうんだよ。制度と今の日本の情勢が合ってないんだな」

 中西さんはそう言いながらも、UR(UR都市機構)なら高齢者でも借りやすいということを教えてくれました。

 確かにURは入居者側に細かい条件はなく、支払えるということを証明すれば貸してもらえそうです。ただ真千子さんの希望であった、駅近でアクセスの良い物件はほとんどありません。大半は駅からバスだったり、人気の高い路線ではありません。

 「住む」ことを重視するなら生活環境もいいのでしょうが、それなら今の戸建てとさして変わりません。真千子さんからすると、せっかく身軽になったのだから、人生を楽しむための引っ越しがしたかったのです。そうなると絶対に譲れない点は、「駅近」です。

 「不動産屋が言うのもなんですが……。条件に合う賃貸に住むことは、難しいと思います。それならば、今の戸建てを売却して、駅近の資産価値の高いマンションを購入されたらいかがですか?」

 中西さんからそんなアドバイスを受けました。真千子さんは、購入することなんて考えもしていませんでしたが、思ったような物件を貸してもらえないなら、それも仕方がないことかもしれないと思いました。

 マンションを購入するとなると、買ってからも月々の管理費や修繕積立金も必要になりますが、一戸建てだって維持費もかかります。

 一人住まいができなくなった時に、老人ホームに入所することを考えると、売りやすかったり、貸しやすかったりする物件なら、それほど資産価値を下げることにはならないでしょう。

 誠さんも、最初は複雑でした。誠さんは大学教授。弟は大手商社マンです。世間的にはちゃんとした息子が二人もいて、亡くなった父親も銀行マン。母親は高齢とは言え、恵まれた環境だと思っていました。だから部屋を借りられないだなんて、思いもしなかったのです。

 きっとひとりでいきなり仲介の店舗に行ったからだ、くらいに思っていました。でも中西さんの口からいろいろ聞かされると、確かに借りることは難しいと思い始めました。

 考えた末、母親の望むような物件を借りられないならと、少し息子として情けない気もしましたが、真千子さんの背中を押すことにしました。

 結局、真千子さんは、中西さんの力を借りて家の売却と駅近のマンションの購入を無事に終え、引っ越しをすることができました。

 家の売却代金とダウンサイズしたマンションの購入金額はほとんど変わらなかったので、手元の現金を減らすことにはならず老後の資金も心配なさそうです。もちろん上を見ればキリはありませんが、日々の生活は年金でやりくりすれば、貯金をどんどん食いつぶすこともせずに済みそうです。

 それでも友達からは、「戸建てを手放すだなんて」と否定的な言葉をたくさん言われました。心が揺らぐことがなかったと言えば嘘になりますが、鍵ひとつの気軽さは何にも代えられず、思い切った決断をして良かったと心から満足しています。

 ただもし同じような物件を借りられていたら、毎月家賃分を貯金で賄うことになるのでしょうが、もう少し現金が手元にあったのにな……と残念でなりません。

 まさかお金があっても賃貸物件を借りられないだなんて、もっと早くから知って人生設計すべきだったと反省しきりです。孫のことなどを理由に転居を先延ばししたことが、悔やまれて仕方がありません。

 「人生の後半戦に住む場所は、現役世代中に考えること」と二人の息子にしっかり伝えた真千子さんでした。

 現代ビジネスより引用




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